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  新たな可能性を掘り起こせ 心の井戸を深く掘れ キリストを宣べ伝える すべてを神の栄光のために

113 【人の心を結ぶことば】

安食 弘幸

「悪いことばを、いっさい口から出してはいけません。 ただ、必要なとき、人の徳を養うのに役立つことばを話し、 聞く人に恵みを与えなさい。 」
<エペソ4:29>

 

アメリカの心理療法の大家(ゲシュタルト心理学の先駆者)フリッツ・パールの著者に 『What Do You Say After Hello?』という本があります。
訳せば「“こんにちは”の後に何と言いますか?」という題ですが、これは非常に含蓄のある題であり、人間関係に関する深い洞察に富んだ書物です。

「こんにちは」という挨拶は誰でも言えます。しかし、人間関係を深めるためには、更にその後に 言葉を付け加える必要があります。
「こんにちは」の後に、例えば「お元気ですか」という問いかけの言葉をかけるとしたら、少なく とも、その答えを受け取るまでは、その場を立ち去るわけにはいきません。従って「お元気ですか」と尋ねるのは、それに対する応答を聞く関心を相手に寄せているから聞くのです。つまり「お元気ですか」という言葉には、相手との人間的交わりを持ちたいという声の掛け手の意思が相手に伝わるのです。

国語学者の坂詰力治氏によると『「こんにちは」は、本来「こんにちはいかがですか」「こんにちは よいお天気で」などという表現の「いかがですか」「よいお天気で」を省略した形である。だから 「こんにちわ」とは書かず「こんにちは」という補助詞の「は」が使われている。「さようなら」が 「さようならば、これでお別れしましょう」の省略形として使われるようになったのと同じで、本来なら「こんにちは」の後には何らかの言葉が続くものである。』ということです。

「こんにちは」の後に何か“ひとこと”付け加えることで、人の心も、人との関係も変わり、また 傷ついた心の癒しが始まるのです。このような人の心を結ぶ言葉は、相手の状況を思い、相手を配慮 する心がある時に言える言葉です。
自分のことばかり考えているようでは出来ないことです。

ある病院で「病人と医療者の人間関係」に関して講演をした時のことです。
講演後に一人の職員の方が、次のようなお話を聞かせて下さいました。
「私たちは、入院患者さんに食事を配膳する時に、“ひとこと”患者さんに優しい言葉をかけるように しているんです。というのは、優しい言葉をかける時と、かけない時の患者さんの食事の食べ具合や、 食べる量がほんとうに違うんですから。社会的に隔離されて寂しい時を過ごしている患者さんに、自分の家族のように“ひとこと”声をかけると、やはり食欲が出るんですね」

食事はただ食欲を満たすだけでもなく、人と人とのつながりを確認する時でもあるのです。
相手に関心を持って、もう一歩踏み込んで、もう一声かけてあげることで相手との新たな関係が 始まるのではないでしょうか。


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