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著者プロフィール


カウンセリング・マインド


藤掛明氏


背伸び・強行突破の生き方

「ピンチのときの2つの反応パターン」(その1)

 私たちは、ピンチのときにこそ、実に個性的な対応を見せる。

 あるときには、精神論、根性論で、「やるっきゃない」「なせばなる」と自分に言い聞かせながら、ひたすら強行突破しようとする。またあるときには、ことなかれ主義に徹して、課題を後延ばしにしたり、早々にあきらめて、人からの援助を期待したりすることもある。前者は、「背伸び・強行突破」型、後者は「甘え、へたり込み」型の反応と呼ぶことができる。

 どちらのやり方が良いというのでない。むしろ私たちは、状況に応じて、どちらの反応も柔軟に使えることが大切なのである。ところが、その人の許容量を超えて厳しい状況が迫ってくるようなときには、不思議なもので、人はどちらか片方の反応ばかりを選択するようになる。そしてどちらか一方を硬直に選択し続けるなかで、様々な問題を生じさせてしまう。

 「背伸び・強行突破」ばかりでいくようになると、ご本人は、(本当は困っているのだが)誰かに助けてもらうという思いは持てず、周囲の指導者や仲間が援助の手をさしのべようとしても、ほっておいてくれと拒絶的になる。ひたすらこれまでどおりのやり方で虚勢をはり、強行突破をしていこうとする。

 一方、「甘え・へたり込み」ばかりでいくようになると、問題に圧倒されてしまいがちで、自信が持てない。周囲に対しても、助けてほしいという思いが強い。これ以上先に進めず、立ち止まってしまう。「背伸び・強行突破」型が、自分の強さ・有能さを過剰に表現するのと対照的に、「甘え・へたり込み」型は、自分の弱さを積極的に表現する傾向にある。また、前者は、一途であるが、頑固、強引という印象を、後者は、素直であるが、もろく、頼りない感じを周囲に与える。

あなたは、どちらの反応を選ぶことが多いだろうか。また最近、ピンチに遭ったときに、どちらの反応で決着をつけただろうか。背伸びし、自分を頼りとしすぎたり、甘えて、他人を頼りとしすぎたことはなかっただろうか。そしてあなたの周りにいる問題を抱えている人は、どちらのパターンで失敗しているのだろうか。この連載エッセイでは、この2つの反応パターン、とりわけ「背伸び・強行突破」型に着目し、そのことで生まれている複雑な問題を解きほぐしていきたいと考えている。

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