聖書の原理と「数字で結果を出せ」の論理(Bottom−LineDemands)
私たちは心の奥底で、ビジネスに対する意味と目的を感じていたいと思う。自分の貢献が正当に評価され認知されること、倫理的ジレンマに満足のいく解決を得ること、混乱の真っ只中にあって明確さと方向性を見出すこと、そして事を成し遂げたという充実感を味わうこと・・・こうしたことは、どんな経営に携わる者にも共通している願いであり、また人種、民族、宗教、男女を越えて共有される望みである。
私たちは正しいことをなしたいと思っている。ところが日常のビジネスライフにあっては、短期的な視点に立って目に見える結果を出さなければならないという圧力に屈しがちである。日曜日には「さあ、神に従おう」と奮い立たされるが、月曜から金曜日の戦いの場では倫理的決断をするための援護射撃がないままなのである。
こうした局面にあって、私たちは二つの異なる世界で活動することを余儀なくされる。つまり、まったく個人的で、私的で、霊的な世界と、まさに公的で、厳しい、競争原理で動くビジネスの世界である。この二つの世界はたいていの場合、価値観、信仰、原理において衝突し、私たちはその狭間に立たされることになるのである。
ビジネスの場で意味を見出したいという真実な願いと、従業員の生活を守り豊かにしなければならないという現実的な要請がぶつかり合って、とてつもない内的ジレンマを引き起こすのである。
私たちはふつう、このジレンマを善と悪の内的衝突としてとらえている。私たちの前に厄介な選択が突きつけられるのである。すなわち、利潤という「結果を出す」ために神に背を向けるか、それとも神の原理を受け入れ、それに従って生き、たとえビジネスに良くない結果が出るとしてもあえてそれを受け入れるか、の選択である。それゆえ、こんな挑戦的な質問をよく受ける。
「競争原理で動き『数字の結果がすべて』という社会で、正しいことをして、しかも成功することは本当に可能なのか。」「倫理基準に従い、しかも利潤を生み出すなどということは可能なのか。」
あなたが神の原理を受け入れているなら、その通りに生きる勇気をもってほしい。神の最善の時を待つ忍耐力を持ってほしい。あなたがそうするなら、私はそれらの問いに「そうだ、できる」と答えられる。聖書の原理と「結果を出せ」という要求とは、けっして相容れないものではない。倫理的に正しい選択をして、同時に成功することは可能である。倫理的であり、同時に採算もとれるのだ。神を崇め、人に仕え、その上でビジネスマンとしての責務も果たすことができるのである。
神は私たちを環境の犠牲者にするために召し出されたのではない。この世のジレンマの中にあっても勇気を持って仕事をし、さらに神に近づくために呼び出されたのだ。私たちが栄え、尊敬される指導者になり、人を助ける模範として奉仕すること、それが、神が私たちに願っておられることである。
神が立てられたリーダーシップとは、堅固な基礎と中心を持ち、外側からのプレッシャーの中でさらに強くなっていくように設定されている。それは、時間とプレッシャーを有効利用し、知恵を生み出し、人格的成長を促し、最大限の生産性をもたらすリーダーシップのモデルである。
神の原理と、あなた独自の能力、技能、人格を統合するなら、あなたは神と強力なパートナーシップを形成し、この世界にあって、この世の一部と化すことなく、成功を収めることができる。結果として、あなたの前に立ちはだかるチャレンジやジレンマがあなたを強くすることになり、神が期待しておられるような「結果を出す」リーダー、なくてはならないリーダーに成長させるのである。
神の知恵、それがあなたの霊的核であり、力と目的と方向とバランスを与え、技能と能力の源となるものである。あなたの人格、それは正しいことを勇気をもってやり遂げようとするありのままのあなたの総体である。あなたの成し遂げたこと、それはあなたが残す遺産である。神を信頼する人は、ダイヤモンドのように、神の御性質をいかなる状況においても燦然と反射させ、最も困難な時においても明るく輝くのである。
意味のあるビジネスライフを求めるなら、その核心のところで、二人の主人があなたの心と理性の支配権を確立しようとして衝突するのは避け得ない。最終的には、誰を主人とするか、あなたが選ばなければならないのである。
あなたの未来はあなたの信仰と行いにかかっている。あなたが信じていることの一つ一つが行いを生み出し、その行いのすべてが結果を生み出す。最終的には、あなたが信じ、毎日なしていることが、あなたという人間を形成する。チャールズ・リードがこう言っている。「行いを蒔き、習慣を刈り取る。習慣を蒔き、人格を刈り取る。人格を蒔き、未来を刈り取る。」
あなたの信仰と行いの及ぼす影響力を正しく理解することが肝要である。その二つがあなたの未来を形づくるからだ。あなたのビジネス上の決断を導いているのはどんな信仰か。あなたの信仰がビジネスマンとしてのあなたを決めているか、それともビジネスの原理があなたを決めているか。あなたは正しい道に歩んでいるか。
神の美と無限の知恵は、私たちに考え選ぶ自由を与える。この本は宗教について説教することでも、善と悪の判断について論じることでもない。そうではなく、あなたが厳しい状況にあっても正しい選択をなすように支援する本である。あなたが立たされるジレンマは、あなたが真の成功を勝ち取るために当然踏むべき飛躍の石である。この本の目的は、ジレンマを解消するための「解決セット」を提供することではなく、あなた自身でジレンマを解決できるように、その行程の手助けをすることにある。
ビジネス社会の原則と神の原則
■ビジネス社会の不文律
結果を出せ
自分の利益のための発想
成功とは金
人を喜ばせるために働く
未知のものを恐れる
リーダーシップとはトップに立つこと
突進せよ。服従は敗北だ
目的は手段を正当化する
どんなことをしてでも成果を上げよ
短期的利益
目の前のものに縛られる
どれだけやっても十分ではない
■神の原則
目的に仕えよ
人を幸せにするための発想
大切なのは人
神を喜ばせるために働く
希望を失わずに生きる
リーダーシップとはしんがりで仕えること
さあ、進もう。服従は勝利だ。
手段は目的を正当なものにする
成果にこだわらず正しいことをなせ
長期的展望(いつまでも残るもの)
選択の自由を失わない
無条件の愛
世俗的リーダーシップと神に従うリーダーシップの違い
■世俗的リーダーたち
・プレッシャーはリーダーを弱くする
・原理よりも利潤を優先するため、時とともにリーダーの評価が落ちる
・人格は時とともに弱まる
・数字で出せる結果以外、何も生み出せない
■神に従うリーダーたち
・プレッシャーはリーダーを強くする
・利潤よりも原理を優先するため、時とともにリーダーの評価が高まる
・人格は時とともに強まる
・数字の結果だけではなく、引き継がれる遺産を生み出す
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