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浜島敏
神様からのメッセージ
-聖書は偉大なラブレター

浜島 敏著 イーグレープ刊


第三章 聖書を翻訳した人たち


聖書協会の設立(メアリーの聖書)

メアリーの逸話の挿絵  世界中の人たちに、自分の言葉で聖書が読めるように、また欲しい人はだれでも聖書が手に入れられるように働いている団体があります。その一つは、「聖書協会」です。イギリスで最初に聖書協会ができましたが、それには次のような話があります。
  イギリスの西にウェールズという地方があります。そこでは、英語とは違ったウェールズ語が話されています。そこに、今から二百年ほど前、一人のメアリーという女の子がいました。家は貧しくて、日々の生活も大変でしたが、メアリーは神さまが大好きでした。近くに立派な家があり、そこにはウェールズ語の聖書がありました。メアリーは三キロ離れた町に学校ができると、喜んで出かけ、本が読めるようになり、土曜日になると、その立派な家に出かけて行き、聖書を読ませてもらっていました。そこに出かけてその聖書を読むのを楽しみにしていました。でも、それだけでは満足できなくなり、そのうちに、だんだん自分の聖書が欲しくなりました。でも、メアリーの家にはとてもそんなお金はありませんでした。そこで、彼女は近所の人たちのお手伝いをして、おこづかいをもらい、少しずつ貯めていきました。メアリーが十歳のときでした。きつい仕事もありましたが、自分の聖書を買うためなら、そんなことは気にはなりませんでした。せっかくそのように働いて貯めたお金も、お父さんの病気がひどくなり、薬代にしなければならないこともありました。でも、六年間働いて、ようやく聖書が買えるほどのお金が貯まりました。
  メアリーは、朝早く起きて、お母さんにお弁当を作ってもらい、大事なお金を、借りたカバンに入れて、はだしで聖書を買うために町に出かけました。町といっても、メアリーのいるところからは、三十五キロも離れている場所でした。大人が歩いても、七、八時間は充分にかかる距離です。しかも、ずっと上り坂です。子どものメアリーには十時間はかかったでしょう。町に着いたときはもう日が暮れていました。その日は知っている人のところにとめてもらい、次の朝、さっそく教会の先生のところに行って、「ウェールズ語の聖書を一冊ください」とお願いしました。ところがその先生は、「残念だけど、そのお金ではちょっと足りないし、それに、もう聖書も全部予約があって、売り切れてしまったんです」と申し訳なさそうに言いました。その上、話を聞いてみると、これ以上はウェールズ語の聖書は印刷しないことが決まっているというのです。せっかく、六年働いて、三十五キロの道を歩いてやって来たのに、もう聖書はないというのです。そればかりか、これからももう買う機会すらないというのです。メアリーは悲しくなって、おいおい泣いてしまいました。
  でも、その教会の先生は、メアリーがどのようにお金を貯め、この町まで歩いて来たかという話を聞いている内に、メアリーがかわいそうになってしまいました。そして、棚から予約済みの聖書を一冊取り出して、「メアリー、これを持って行きなさい。本当は、これを上げたら困るんだけど、君の話を聞いたら、君にこの聖書を上げないわけにはいかなくなったよ」と言って、親切に渡してくれました。メアリーは夢にまで見たウェールズ語の聖書をとうとう自分のものにすることができたのです。
  このときのことを忘れられなかったこの先生は、ある会議で、全世界の人たちが聖書を読めるような手助けをする会を作ろうと提案しました。そして、「聖書協会」という会ができたのです。この会は、今では世界中の言葉に聖書を翻訳する仕事や、またできるだけたくさんの人たちに安い値段で聖書が読めるようにする仕事をしています。

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