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著者プロフィール


「その人らしい成長と自立をサポートするコーチング」(4)

広崎 仁一


コミュニケーションの本質

このシリーズではコーチングを「相手の可能性を引き出し、その人の成長と自立をサポートするコミュニケーションスキル」と定義づけた。コーチングにおける基本的なコミュニケーションスキル(傾聴のスキル、承認のスキル、質問のスキル)の説明に入る前にまずコミュニケーションの本質を考えてみたい。コミュニケーションはラテン語の「コミュニス」が原語となっており、これは「お互いの生きた関係の中で何かを分かち合う(共有し合う)」と言う意味を持っている。それではコミュニケーションにおいては一体何を共有し合うのか?価値観・考え方・意見・情報・気持ち・感情がそれにあたる。自分の考え方や気持ちを相手に伝えると同時に、相手からも意見や情報を与えてもらうという関係である。コミュニケーションの本質は相互に影響し合うことである。そしてコミュニケーションの基本は相手の立場に立って相手に解り易く伝えることにある。

コーチングにおける基本的スタンス

 イスラエルの哲学者マルティン・ブーバーは「我と汝」という著書の中で、人間がとる基本的態度には「わたしとそれ」という場合と「わたしとあなた」という場合の二つがあると言っている。前者は相手を物的対象(モノ)として扱う非人格的な関係となり、後者は全人格的で対話的な人間関係を築く。また前者は所有⇔利用とか、支配⇔被支配という関係になり、後者は互いに知り知られるという相互的・対等な関係となる。ビジネスの現場においても上司と部下の関係が前者の場合には、上司が部下に対し所有意識を持つようになるため、支配的・操作的に扱う事が多くなる。「ヒト」の「モノ」化現象である。
コーチングにおける基本的スタンスは当然のことながら「わたしとあなた」という全人格な関係の中における
1.「対等」のスタンス:相手とは上下の関係ではなく平等の関係である。
2.「味方」のスタンス:常に暖かい関心を持って相手を見守り行動をサポートする。
3.「Let’s」のスタンス:最後までともにゴールを目指す。
となる。

信頼関係の構築

コミュニケーションの本質を理解し、コーチングの基本スタンスにのっとり「その人の成長と自立をサポート」していくためにも、両者の信頼関係の構築がまず大前提となる。このシリーズの(2)において既に「選択理論における人間観」に触れたが、信頼関係を確立するためには、日常の中で相手の5つの基本的欲求(@愛・所属の欲求〔人と関わりたいという欲求〕、A力・価値の欲求〔人に認められたいという欲求〕、B自由の欲求〔自分で決めたいという欲求〕、C楽しみの欲求〔学ぶことや好奇心を満たしたいという欲求〕、D生存の欲求〔生命維持に関する身体的な欲求〕)、を阻害せずに満たすように関わることが大切である。
たとえば「愛・所属の欲求」の場合、「あの人はいつもわたしのことを気にかけてくれている」とか「誰もわかってくれる人がいなくても、あの人ならきっとわかってくれる」、さらに「困った時にはあの人に話を聴いてもらいたい」と感じるような相手であれば、その人は間違いなく自分の「愛・所属の欲求」を日常で満たしてくれている人である。私達はこのような人に「いつも一緒にいて欲しい」と感じるのである。
自分の基本的欲求を満たす理想的なイメージ写真を選択理論では「上質世界」と呼んでいるが、日頃から「愛・所属の欲求」を満たしてくれる相手(自分が欲しくてたまらないものを与えてくれる相手)の写真は、確実にその人の脳の中に貼られている。上司(コーチ)が信頼されているというとは、相手の上質世界に自分の写真が貼られているということである。
マタイの福音書7章12節「自分にしてもらいたいことは、ほかの人にもそのようにしなさい」の御言葉(黄金律)に生きることは、相手との信頼関係を構築することに繋がる。

「ラポール」を生み出すために

心理学者のアルバート・メラビアン博士は、ある人が他の人にコミュニケートする場合に与える印象について研究した。それによると「言語」そのものは7%、「声の調子」は38%、「表情・身振り・態度」は55%の影響を与えることが判明した。この調査はノンバーバルな要素が言語そのものよりもはるかに雄弁であることを示唆している。コミュニケーションにおいては何を言うかではなく、どのように言うかがより大切になる。また日常無意識に行っていること(しぐさ・態度)を見直し、意識的に行動する必要性があることを教えてくれている。
「ラポール」という言葉がある。これは信頼に満ちた暖かい感情の交流とか、相互理解の関係を表す言葉である。コミュニケーションを持とうとする場合最初に「ラポール」の関係を作る必要がある。そして相手と「ラポール」の架け橋を作るためにもまず「ペーシング」というコミュニケーションスキルが必要になってくる。英語のPacingは「歩調を合わせる、足並みをそろえる」という意味があるが、単に相手にペースを合わせ「相手のダンスを踊る」というだけではなく、相手の身構えを解く(胸襟を開く)という目的ために用いられるスキルである。「ペーシング」には、声の大きさ、話すスピード、姿勢、視線の高さ、言葉遣い、服装、相手との共通点 等様々なものがある。「ラポール」を生み出す「ペーシング」を実行する際には「メラビアンの法則」を意識する必要がある。

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