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著者プロフィール


「その人らしい成長と自立をサポートするコーチング」(5)

広崎 仁一


今回からコーチングにおける3つの基本的なコミュニケーションスキルを扱うが1つ目として「傾聴のスキル」について解説する。

傾聴のスタンス

人は誰でも親身になって自分の話を聴いてもらいたいという欲求を持っている。この「愛・所属の欲求」が満たされる時にモチベーションは高められる。コーチングの基本はまず相手の話を「聴く」ことから始まる。「きく」には「聞く」と「聴く」とがある。「聞く」(hear)は「聞き流す」に代表されるように、聞きたい部分だけを聞く自分本位の聞き方といえる。一方「聴く」(listen)という行為は、誠実なresponse(うなずきなど)を伴い、自分の五感をフルに使って「こちらの聞きたいこと」ではなく「相手の言いたいこと」を心を込めて真剣に聴き取る傾聴の姿勢のことである。

「聴くことの効用」と「傾聴のポイント」

話し手は自分の話をしっかり聴いてもらえることで以下のような効用が生まれる。
(1) 「自分はこの人に受け入れられている」という安心感が生まれる
(2) しっかり聴かれた体験は、「自分の話には価値がある」という自信になる
(3) その自信が「自分には存在価値がある」という自己肯定感につながる
(4) 自分が何を感じているのか、思っているのかがはっきりする
(5) 新しいアイデアが閃いたり、バラバラだったイメージが統合されていく
(6) カタルシス効果(内面の浄化作用)があり、気持ちが軽くなる
(7) 話を聴いてもらった人は、相手の話を聴くことが出来る
そして聞き手にとっても「傾聴」することで相手のゴールや問題点が浮かび上がり、より効果的な「質問」がし易くなるという効果も生まれてくる。
また「傾聴のポイント」としては以下の7点が挙げられる。
(1)話をさえぎらずに最後まで聴く
(2)相手の感覚を大切にし受容する
(3)アイコンタクトをとる
(4)うなずく・相槌を打つ
(5)話のキーワードを繰り返す
(6)促す・質問する
(7)話を要約し確認する

「聴く」ことについて

「聴く」ことはコーチングにおいて最も重要なスキルである。ただし「聴く」ことはそれほど容易なことではない。それは自分が「話す時」の内容は自分でコントロール出来るが、「聴く時」の(話の)内容は一切コントロール出来ないからである。「聴く」ということは相手の立場(相手軸)に自分の身を置いて「聴かされる」ということである。「聴く」とは「本当に聴いているのか?」という「聴き方の質」が問われるものである。
「コーチング」は自分の中にある「答え」を探し出すプロセスである。人は迷いがある時や悩む時、自分の中にある「答え」に出会うため無性に誰かに聴いてもらいたくなるものである。その際に聞き手は徹底的に「相手軸」に自分を置き、相手を「信じて聴く」ことが肝要となる。自分に能力や可能性があると信じて話しを聴いてくれる上司(コーチ)に人は信頼を寄せる。
前回、上司(コーチ)が信頼されているということは、相手の「上質世界」に自分のイメージ写真が貼られていることだと述べた。「傾聴」することは相手の基本的欲求(特に「愛・所属の欲求」)を満たすため、人は日頃から「傾聴」してくれる相手を自分の上質世界に入れ易く、相手の言うことには素直に耳を傾け受け止めるという傾向を示す。上司(コーチ)としての信頼は「傾聴」から生まれるといっても過言ではない。

「傾聴」を阻む姿勢

「信じて聴く」ことを頭で理解できたとしても実行に移すことは決して生易しくはない。生まれながらに身に付いている「答えを与えたい」という欲求がすぐに頭をもたげてくるからである。
その他、組織においてよく見られる「傾聴」を阻む姿勢としては
(1)評価的な発言をする(ケチをつける)
(2)説教をする
(3)威嚇する
(4)否定する・遮断する
が挙げられる。
このような上司に対して部下は「この人に話しても聴いてくれない」、「もうこの人には何も言うまい」と考え自然と距離を置くようになる。こうなると信頼関係は築けなくなり、コーチングどころではなくなる。
コーチングにおける「聴く」ことは「相手の中に答えがある」と信じきることが前提条件となる。そして「信じる能力」は上司(コーチ)が自分とどう闘えるかがポイントになってくる。

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