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著者プロフィール


哲学者と経営者の対話 16  

稲垣 久和氏

(beingからbecomingへ)

稲垣  存在モデルというのはbeing(存在)ですから、どうしても、static(静的)になってしまうんですね。それで今このbeingをbecomingにしようと言う意味は、ダイナミズムが本当の聖書的な信仰ではないかということで、それを私は創造の秩序、秩序と皆言うんだけれど、第1日目から第6日目までを神の創造とあり、種類に応じて違う物を創造している。それは存在のヒエラルティーとちょっと違うんじゃないかと思うんですね。

穂森  日本の社会は多様性をあまり認めないですね、企業や教会も含めて。個性を出しにくいところがある。

稲垣 多様性の教会モデルというのは聖書にありますが、体の器官がみな違うように、

 教会も本来は多様性だと思うんです。多様性がなくなると危機的になる。

―  多様性に関して、私は前に考えたことがあるんですけれども、結局自分の立場、視点からしか物事を見ないと、多様性がなかなか生まれてこないと思うんですね。ですから先の三方の話がありましたけれど、相手の立場に立ってみるとか、あるいは相手を複数考える立場に立って物事を見たら、違って見えるわけですよ。よく出る例えなんですけれど、例えばコップを見る時、自分の立場、視点からはこちらしか見えない。相手からは違う視点で見える。ですからこのリアリティーを把握するためには、もっと言うと、自分の視点だけにこだわっていてはならないと。私はこう見えますよ。相手はこう見える。その時に私の見えるのが正しくて、相手の見えるのが間違っているとは言えないわけですよ。私たちは往々にしてそう言ってしまうんですよ。ですから、多様性を、さっき寛容とおっしゃったんですけれども、私が見られないこと、気がつかないところを相手の方が見て下さって、教えて下さって、私は全体的なことを見られるようになりました。ありがとうございましたと。感謝する気持ちが、私は多様性を発見するポイントになると思うんですよ。どうしても自分の見えるところが正しいと、人間はこだわってしまうんです。

 私たちは自分の側からはリアリティーは全部見えない。リアリティーを一部切り取っただけに過ぎない。本当にリアリティーを見るためには多様性を認めることも含めて入れていかないと。お互いに教え合う。それは人間的に成長しないと。先生は「愛」とおっしゃったんですけれども、なかなかできないことだと思うんですが。

(アイデンティティー確立から成熟へ)

稲垣  成熟というのが今、日本の教会にすごく求められていると思います。さっきアイデンティティーということをおっしゃったんですけれども、エリクソンはアイデンティティーを強調した心理学者で、彼が一番強調しているのは青年期です。それで中年期になると、むしろジェネラティビティー(世代)次の世代を、ある意味では育成する。ですから成熟するというのはアイデンティティーにこだわらないで次の段階に行くということですよね。

― ただアイデンティティーは通過点ですね、留まるのではなくて。

稲垣  だから日本のキリスト教も初期の頃はアイデンティティーでいいんですけれど、他の神道とか仏教と違うよとか、そればかり主張しているんですよね。アイデンティティー確立の時期はそうなんです、子供みたいに。ところが成熟するということは、他のものと自分が違うのを認めた上で、なおかつ寛容さを持つことではないですか。それはどういうことかと言うと、別に伝道しないということではなくて、今伝道の場面ではなくて、クリスチャン企業とか、クリスチャンとして何かやろうとか、そういう場面を考えていますから、やっぱり相手から学ぶとか、いくらでもできることではないですか、成長していれば。

 

 

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