「キリストの人材教育」(V)−1
―驚異の人材を育てるユダヤ式教育―
私はしばらく前「沢松家のテニスと子育て」というテーマで、沢松忠幸・純子ご夫妻の講演を聞きました。沢松ご夫妻は、ウインブルドン大会で日本人として最年少で優勝した沢松奈生子氏のご両親です。私は本当にいろいろ学ぶところが多く、教えられました。人を育てることは人生の大事業です。家庭においてはもちろん、企業、共同体、団体においても人材教育は非常に大きな課題です。どうすれば良い人材教育をすることができるか、また、部下をどう育てたら良いか、あるいはまた「育てる」とはどういうことか、恐らく皆様にとっても、これは遭遇する大きな課題ではないかと思います。世界や日本で成功を収めた成功者は、ジャンルや分野が異なり多数います。しかしながら、「民族として成功を産んだ民は?」と尋ねると、どのような民族でしょうか。私は、ユダヤ人、ユダヤ民族であると思います。彼らは民族としての成功率ナンバーワンです。そこで私は、この不思議な民ユダヤ人に的をしぼり少し考えてみたいと思います。すなわち、「人を育てる」という意味で、ユダヤ人は一体どのような育て方をし、どのように人材を生み出しているかという点です。
◎不思議な民ユダヤ人
ユダヤ人は不思議な民です。世界で約千四百万人のユダヤ人がいるといわれます。世界人口の比率で言えば、わずか0.3%です。それにもかかわらず、ノーベル賞受賞者の約20%近くがユダヤ系です。例えば、ロスチャイルド一族、カミロ・オリベッティは金融業で大成功を収めたユダヤ人です。また、アンドレ・シトロエンはフランスの有名な自動車会社の創業者で、彼もユダヤ人でした。ヨーロッパではシトロエンの車は高級車で、欧州各地で見られます。ノーベル物理学受賞者のアルベルト・アインシュタインも知られた有名なユダヤ人です。また、ジークムント・フロイドは心理学者で、カール・マルクスは社会哲学者です。カール・マルクスは私が学んだトリア大学のあるトリアという町で生まれ育ち、六歳までそこで生活しました。現在、彼の生家は博物館となっています。私もよくカール・マルクスの生家に行きました。幼少時代にどのような教育や環境の下に置かれたかは、その後の彼の人格形成、人間形成に非常に大きな影響を与えることを感じました。マルク・シャガールは有名な画家で、ユダヤ人でした。ウラジミール・ホロビッツも有名なピアニストです。また、ザルツバーガーは新聞界の巨匠です。ハリウッド映画界のワーナー兄弟や、米国のキッシンジャー元国務長官もユダヤ人です。その他数え上げればキリがありません。私たちが知っている範囲でも次から次へとそのような名前が出てきます。
◎驚異の人材を育てた秘訣
そこで、この驚異の人材を育てた秘訣は一体どこにあったのでしょうか。それは「ユダヤ式教育」にあります。ユダヤ人は昔から「The People
of the Bible(聖書の民)」と呼ばれ、彼らの歴史は五千年以上続いています。その基本は「トーラー(Torah)」といわれるもので、旧約聖書の初めの五つ、創世記から申命記までにあります。この五書はモーセという人が書いたと考えられているので、「モーセ五書」ともいわれます。このトーラーが、実はユダヤ式教育の基本になっています。そして、その驚異の人材は一体どのように生み出されたのでしょうか。この点について、私は多くの事柄を語りたいのですが、今日はその中で三つのポイントに絞り話をいたします。
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