シュヴァイツァーに学ぶ >>シュヴァイツァーの生涯(PDFファイル)
10 冷静な自己吟味
まわりから反対されても、シュヴァイツァーは動じなかった。その理由の一つは、冷静に自己を吟味してことだといえよう。
「私は若い頃からすでに、他人が一生涯、働きぬいてはじめて手にするほどの名声をかちえていたのであるから、そのような憶測(出世欲)はいわれのないものであった・・・理想主義は冷静であるべきだと信じているわたしは、当時でも、前人未踏の仕事はかならず冒険であり、それが意義と成功の見込みをかちえるのは特殊な事情のある場合にかぎる、ということを知っていた。自分の場合はどうかといえば、この冒険は正当である、とわたしはみなした。なんとなれば、わたしは長い年月、あらゆる面から熟慮して、健康、平静な神経、精力、現実的感覚、堅忍不抜さ、分別、無欲、その他この理想の遂行のために必要なものをすべて持っているとの自信があったし、また、そのうえ、計画が万一、失敗したさいにも、それに耐えるのに不可欠な性情をそなえているという自信があったからである」
情熱と冷静さ
シュヴァイツァーは自らのライフワークを「前人未踏の仕事」「冒険」「理想」とみなしていた。だからこそそれに必要なものを自分が備えていることを客観的に冷静に吟味して認めていた。「健康、平静な神経、精力、現実的感覚、堅忍不抜さ、分別、無欲、その他」の適正を列挙している。理想に熱く燃えるだけでは何もならない。冷静に客観的に自己を洞察して可能性をさぐることだ。HOT HEART とCOLD MIND。
計画が失敗した時にどうするか、ということもシュヴァイツァーは考察していた。熱情だけの人間にはできないことだ。宗教的情熱は酩酊につながる。情熱とともに冷静な判断力もライフワークの実現に必要である。
(シュヴァイツァー)
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