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著者プロフィール


カルヴァンの生涯F


黒川知文

 

『キリスト教綱要』

1533年末、放浪の旅の途上にあったカルヴァンは、アングレームに数カ月間滞在した。彼は、友人の家にて、膨大な図書に囲まれ、ひたすら聖書研究に励んだ。その後、シュトラスブルクを経て、バーゼルに滞在した1535年に、『キリスト教綱要』の初版を脱稿した。彼が26歳の時であった。

この書は言うまでもなくプロテスタント神学を代表する書である。カルヴァンは、これをラテン語とフランス語で書いた。八つ折520ページのポケットに入る小さな書であった。

この書は、教理問答書としての性格とキリスト教を守る性格とをもっていた。各章の内容は以下の通りである。

第一章 律法について
  ・律法は救いの手段ではなく、人間を絶望に導き、神の救いのそなえを知らせる教師として働くものである。
  ・十戒の説明

第二章 信仰について
  ・使徒信条の講解(特にキリストの人性と神性の説明に集中。)
  ・偽りの信仰は、神やキリストを知らずに経験にたよる盲信である。真の信仰は、神とキリストに関する正しい知識と希   望のある信仰である。

第三章 祈りについて
  ・キリスト中心の祈りと公同の祈りと人間中心の祈りの対比。
  ・主の祈りの講解

第四章 正しい聖礼典
  ・聖礼典とは、外的しるしによって人間に明示された神の恩恵の証拠である。また、神の言葉の信頼すべきことを鈍い   人間により明らかにする実践である。

第五章 偽りの聖礼典
  ・カトリック教会の堅信礼、悔悛、終油、品級、結婚は聖書に基づかない。

第六章 キリスト者の自由、教会の権能、世俗的統治について
  ・キリスト者は@律法からの自由 A律法を守る自由 B外的事物からの自由、を持つ。
  ・人間界には世俗の統治と霊的統治とがある。教会には後者を保持する権能があり、教会自体は救いのための必須条   件ではない。
  ・世俗的統治は、この社会に生きている限り必要なものである。それは、偶像礼拝を避け、公共の平和を守るものでな   ければならない。
  ・もしも統治者が主に反することを命じるなら、それに従うべきではない。なぜなら、主こそ王の王であるからである。

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