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著者プロフィール


ライフワークの発見と実現


黒川知文

内的促しに従う 

  東京大学人文科学研究科博士課程募集要項には哲学、言語学、西洋史などの専門別による募集人員が書かれていた。その中に「宗教学・宗教史学」という専門名があった。これならユダヤ教をはじめ宗教一般に関する知識が得られて研究が進展するかもしれない。募集人員は若干名。しかし、私立大学の教員が応募することができるのであろうか?募集要項の注の最後に、国公立大学に勤務する者が応募して合格した場合には、退職して入学しなければならない、という内容が書かれていた。文学部事務室に行き、このことを事務員に聞くと、私立大学に勤務する者は合格後に勤務校の学長の承認だけが必要であり、勤務しながら学ぶことができる、とのことであった。眼鏡をかけた年配の事務員は、どんどん応募してください、とにこやかに私に応募を勧めた。
坂を下って千代田線を使って帰宅した。家まで要した時間は一時間あまり。これなら通学も容易である。私の内なる思いは、応募することに傾きつつあった。
夕食後に妻にこのことを相談すると、やってみたらどうですか、という返事であった。この返事を待つまでもなく、私は応募することにすでに決めていた。
進路を決定する時、内的促しをまず考えることにしている。自分は何をしたいと考えているのか?自分の思いはどこにあるのか?それを祈りとともに冷静にさぐることである。たとえその進路が不可能に思えても、まず思いはどこにあるのかを知ることである。もしそれが神様の進路であるなら、どんなに不可能なものでの可能になる。そして思い込みを避けるために、第二に、客観的状況がその方向になっているかどうかを確かめることである。いくら思いはそこにあっても現実にならなかったならば、それは神様の導きではなく、人間的な思い込みにすぎない。内的促しと客観的外的状況、それにみことばの支え。これらが信仰者の進路を決定していくものである。
応募することを決心して、応募書類をまとめて提出しなければならなかった。その書類の中に出身大学の学長による推薦書があった。私の指導教官は母校である東外大の学長になっていた。そこで電話をかけて学長室にて会って推薦書をお願いすることにした。

原卓也学長(故人)は一切権威者ぶらない先生であった。かつての学園紛争の時には学生の側に立つ「造反教授」となり、学生を守るために何人かの教授とともに教授会に辞表を提出したという逸話のある先生であった。豪華な広い学長室に入ると、隅のところに原学長が座っていて笑顔で私を迎えてくれた。挨拶の後に推薦書について説明すると、「東大の宗教学科?ああここなら僕の娘が学んだところだ。昨年、娘が修士号を取り、今は双葉の教師をしている。よし。書くよ。」と言って、またたくまに推薦書を書いてくださった。

 

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