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著者プロフィール


ライフワークの発見と実現


黒川知文

クリスチャン学生の協力

 私の学位論文は、勤務していた東京基督教大学の学生と教員の協力がなければ締め切り日にはできなかった。そのために学位論文の「あとがき」には、彼らへの感謝を記している。
  Kさんは夏休みに膨大な論文をパソコンに入力してくれた。しかし、彼女はマックを使用できない。そこでマックを持っている学生を捜してもらった。何人かいたが、その中から男子学生でパソコンのプロと呼ばれている人を選んだ。O君がパソコン博士であった。彼と契約を結んでアルバイトを頼むことにした。彼は忠実によく働いてくれた。
  指導教授とは朝の十時に彼の家から近い地下鉄で待ち合わせをして、私が原稿を一章ずつ手渡した。そして指導教授はそれと交換にすでに渡していた章の朱筆で訂正された原稿を私に渡された。それを持って帰り、O君がパソコンに入力する。私は次の章を書き上げていく。この作業が何回か続いた。
  クリスマスの頃は学生にとって忙しい時である。教会のクリスマスの手伝いがあるからだ。しかしO君はそんなことは一切私に言わずに私の言う通りに作業をしてくれた。地図や表の作成もあり作業が困難になった時、O君のパソコンも私の研究室に持ち込んでもらった。パソコンが二台、プリンターが二台、そしてワープロ一台、コピー機一台が狭い研究室に並んだ。壮観なながめである。
  そこに私とO君と時折Gさんとが座り、脇目もふらずに入力していった。何人かの学生も研究室に訪れて、夜食やおかしの差し入れを持ってきたり、入力の手伝いもしてくれた。七百枚に及ぶ学位論文はこのようにしてできあがっていった。
  チャペルの卒業説教や、教会でのクリスマスコンサートのソリストとしての奉仕もあるのに一切それを私に言わずに黙々としてO君は作業をこなしていった。
  最後の日は予想通りに研究室にて徹夜の作業となった。クリスマスコンサートの奉仕を終えてO君が夜時に約束通りに研究室に来てくれた。それから翌朝にかけて作業した。提出締め切り二日前の朝の五時頃、ふと見ると、O君はキーボードをかかえたまま気持ちよさそうに座って眠っていた。私は彼を起こすのは悪いと思いそのままにした。と同時にこの時初めて、「本当に今日完成するのだろうか」と不安になった。気が沈む思い。
  私の思いが達したのだろうか。O君はすぐに目を覚ましてキーを打ちだした。空は白み始めていた。美しい朝焼けの赤い雲が研究室から見ることができた。
  いよいよ今日、完成して、明日提出しなければならない。

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