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著者プロフィール


ライフワークの発見と実現


黒川知文

シュヴァイツァーに学ぶ   >>シュヴァイツァーの生涯(PDFファイル)

7 複数のヴィジョンー聖書と学問と音楽―

 21歳の春に立てたライフワークに基づき、シュヴァイツァーは29歳までの8年間を人生の準備期として過ごす。30歳までは学問と芸術のために、と準備期間を限定しているために、いっそう充実した日々となった。
  かつて手塚治が「二つ以上の人生目標をもて。ひとつなら達成できないと立ち直れなくなるから」と言った。医師であり漫画家となった手塚治にふさわしい言葉と言えよう。
  確かに、人生目標は複数の方がよい。なぜなら、手塚の述べた理由以外に、人の能力は一つに限定されず、また、目標が一つだけだと疲れてしまうからだ。複数のヴィジョンを持っていれば、あるヴィジョンを実現しようと努力する間、他の目標への挑戦は休むことが出来る。疲れない。また、この方が結果的には効率的だ。さらに、複数のヴィジョンの内容は、互いにその性格が異なるものの方がよい。気分転換が十分とれるからだ。
  聖書と学問と音楽。これらが、シュヴァイツァーが従事した30歳までのライフワークであった。聖書については、イエス伝研究で神学博士号を取得し、学問ではカント哲学により哲学博士号を取得した。いずれも20歳台半ばという、かなり若い時において取得された。
  さらに音楽については、パイプオルガン演奏だけでなくピアノ演奏やバッハの研究、そして、パイプオルガンそのものをも研究対象にしている。
  「パイプオルガンには、平均して持続的に保つことのできるその音のために、なにかしら永遠の感じがある」(『シュヴァイツァー選集2』、92頁)
  芸術は一瞬にして人の心を変えることが出来る。特にバッハのパイプオルガン曲は、聴くと永遠へ心を向けさせる。神に思いが届くように感じる時もある。荘重な礼拝と変わらない。
  このように、準備期の8年間は、シュヴァイツァーにとって、実に充実した年月であったと考えられる。
  ところで、シュヴァイツァーにならって、私は聖書と学問と文学をライフワークにしている。牧師として説教や講義により聖書を教え、学問としては、歴史学と宗教を研究、教育し、文学としては小説や評論を書く。さらに、パイプオルガンと声楽も習った。他者から見れば、忙しくて複数のことを同時に求めるのは不可能に思えるかもしれないが、これらは互いに性格が違うので疲れず、かえってこれらのバランスが壊れた時に疲労を覚える。今後も新たなライフワークを加えていきたいと思う。

 

シュヴァイツァー

(シュヴァイツァー)


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