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テモテ・コール
著者プロフィール


家庭と仕事 

テモテ コール執筆 ファミリー・フォーラム代表


事実と感情と期待

 「あなたって、全然家にいないわね!」
  「そんなことないよ、先週は、八時までに帰った日が三日もあったよ」
  「体はここにいても、ずっとパソコンに向かいっぱなしでしょ」
  「だって子どもたちはみんな宿題をしていたし、だれも僕に話しかけようともしなかったじゃないか」
  「無理もないわよ、あなたって、いつも家にいないんだもん」

 どこかで聞いたような会話だなと思いますか?そう感じるのは、あなただけではありません。事実と感情と期待とが一致しないというのが、多くの家庭で起きる摩擦の典型です。この摩擦のダイナミックスを理解し、解決法を見い出せば、夫婦生活がはるかにスムーズになります。

 あなたは、事実を大切にしますか、それとも感情を優先するほうですか?多くの家庭では、夫婦の一方が論理的で、だれが何をし、何を言ったかを気にし、理性的な解決を求めますし、他方は感情を重んじ、雰囲気を変えることに解決を見い出す傾向にあります。その結果、二人が同じ部屋にいるのに、それぞれが別の窓を向くことになってしまいます。一人は、山が見えると言うし、一方は山じゃなくて海が見えると言います。相手の窓をのぞくことをするまでは、会話は行き詰まりです。

 最初の会話に戻りますと、「事実」は、夫は前の週三回自宅にいたのです。しかし、妻の「気持ち」は、「夫は家にいなかった」なのです。なぜそんなにちがいが出るのでしょう。それは、家庭生活に積極的に参加するとは何かについて、二人の期待が異なるからです。妻は、夫が近くにいて子どもたちの宿題を見てあげ、何か一緒にしてやってほしいと期待しました。かたや夫は、子どもは宿題を自分でやるべきだし、勉強を見るのは母親のつとめだと思っています。妻は、子どもの日常生活に関わることによって絆を結べると信じています。夫は、子どもを野球の試合や釣りに連れて行けば心の糸がつながると思います。
  妻は、家庭を中心に回っている自分の生活に夫がもっと関わってほしいと願います。夫は妻に、職場のストレスをもっと理解してほしいと思います。このすべては二人の会話の水面下にあったのですが、どちらもそれに気づきませんでした。しかし、事実と感情と期待とをよく整理しなければ、家庭の雑事の中でこれからも同じ衝突は起きるでしょう。
  では、この問題をどう解決できるでしょう。まず、二人は事実と感情を認め、大事にすべきです。そうしたら、こんな会話になるでしょう。
  「先週は、夜家にいたことが二三日あったわね、でも全然いなかったみたいに感じたわ」
  「君は、そう感じたわけね、どうしてそう感じたんだと思う?」
  妻は、自分の気持ちを夫に伝えますが、事実に反した非難はしていません。夫は、妻の感情は認め、理解したいと願います。
  次は、背後にある期待や信念を見い出すことです。こんな会話になります。
  「家にいた夜はいっしょに食事をしてくれてうれしかったけど、あなた子どもたちと話をしないで自分の部屋でパソコンやってたわよね」(夫の努力は認めつつ、事実を述べ、期待を表します。)
  「ぼくが食後にパソコンをやらないで、子どもと話すのが大事だって君が思うのはなぜだい?」(夫は、自己弁護せず、理解を深めようとします。)
  「子どもと話をして心を通わせるのは大切だからよ」(期待の裏にある信念を述べます。)
  「つまり、ぼくが子どもと話をしないで宿題をみてやらないと、子どもと心が通わなくなってしまうと君は心配してるわけだね?」(妻の言わんとしていることを自分が理解しているかを確かめます。)
  「そうよ、子どもの心を理解するって、あなた大事だと思う?」(自分の信念を明らかにします。)
  「もちろんだよ。ただ、ぼくは、釣りに行ったりカラオケに行ったりしてつながりを作りたいだけ、そしたらみんなでリラックスして楽しめるし」(彼も、自分の信念と期待を言います。)

 三番目のステップは、そういう期待と信念がどこから来ているかを話すことです。妻は、自分の親に宿題を手伝ってもらった暖かい思い出があるのかもしれません。一方、夫は父親と釣りをした思い出があります。ともに、互いの期待や信念がどこから来ているかを知ります。このプロセスがうまく行くには、二人が自分の主張を展開せずに、相手を理解することに焦点を当てることです。そうした後で、さてどうするかを決める段階に来ました。

 最後は、何をするかを話し合います。妻は言うかもしれません。夫は子どもと何かをするのは大事だって口では言うけど、もう一年以上釣りに連れて行ったりしていない、夕食が済んだら、パソコンを立ち上げる前に、子どもとキャッチボールやレスリングをしたり、絵本を読み聞かせてほしいと。もう一つ、夫が子どもに関心を持てるよう、週に何度か宿題について夫と話す時間を持ちたいと。また、子どもたちと直接話して、お父さんに対する期待を聞いてみることもできます。
  できることをすべてやっても、まだ夫婦は一致しないかもしれません。完全に満足はできないかもしれません。しかし、事実と感情と期待とを話し合うプロセスを通して理解と尊敬が深まり、問題が解決する可能性も高まります。もしかしたら、核心部分の信念がぶつかりあっていたり、調整の必要な部分があぶりだされてくるかもしれません。それはつらく困難でしょう。でも、少なくとも二人が表面的なところではなく本当の深い問題を話すチャンスにはなります。

 最後に、窓のある部屋の話に戻りましょう。一つの「窓」は、感情という窓です。別の「窓」は、事実、リアリティーという窓です。景色はちがいますが、ともに部屋に光をもたらします。どちらも、全体像の一部なのです。感情によって、私たちの人生も人間関係も豊かにされます。しかし、感情が、本当の事実に基づいていなければ人間関係は非常にぜい弱なものになります。あなたが、事実にこだわる人なら、自分と人の感情を大切にすることを学びましょう。あなたが、感情を大切にする人なら、感情に流されないようにしてください。あなたの「窓」から見る「眺め」が、ますますカラフルで美しいものになりますように。

 

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