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著者プロフィール



こころと魂の健康
 
 

渡辺俊彦氏

怒りの処方箋(3)

 人々の声に耳を傾けていると気がつくことがあります。それは、自分を変えないで人を変えようと熱心になっている姿です。そして、なかなか自分の思い通りにいかないと、「あの人は頑固で困ったものだ」と評価しレッテルを貼ってしまうのです。頑固さは頑なさとは違います。人の頑固さはこだわりです。私たちは、そのこだわりをなかなか承認することができないものです。
  なぜ、私たちは自分を変えないで人を変えようとするのでしょうか。それは、自分の生きる生活の場や環境を自分流にすることによって快適な空間を作りたいという無意識な反応です。私たちは、自分を変えないで人を変えようとするため人に抵抗されるのです。
  実は、人間の人生を構成しているものとして四つのポイントがあります。その第一「環境」、第二「他人」、第三「過去」、第四「自分」の四つです。私たちは、環境、他人、過去の三つについて変えることはできません。しかし、四番目の自分を変えることができます。しかし、その自分が一番難しいのです。
  私たちの人間関係の中で起こる様々な反応は、過去と深い関係があります。それだけ、私たちにとって過去は人生の一部なのです。ところが、私たちは過去の事柄をあまり意識していません。また、生まれ育った家庭において経験した喜怒哀楽の感情についてもあまり意識しません。しかし、過去の経験で受けたものが今の自分の感情を呼び起こしているのです。私たちが、人間関係が円滑でないと感じたり、いつも同じ反応や失敗を繰り返しているとしたら過去の自分を知る必要があります。人が悪いのではありません。反応してしまう自分の中にある何かが問題なのです。
  私には、「正義感が強い」と評価された時代がありました。私自身そのような評価を受けないうちに、「僕は正義感が強いのか・・・。強いのだ」と次第に思い込むようになりました。なぜ、人の目にそう映ったのでしょうか。社会的立場のある者が、弱者や病む者、困難の中にある人々の話を聞き寄り添うことをしようとしない。あるいは、よくその人を理解しようとしないままで偏見を持ち見下している。そのような人々に対して、いつも同じ反応と行動をとっていたのです。一見、強気を挫き弱きを助ける美談のような話です。
  私は、その同じ失敗を繰り返しながら自分自身と向き合いました。そして、気がつきました。自分の中にあると思い込んでいたのは正義感などではない。私に対して、ほとんど支配的に関わり見下していた父親に対する怒りの感情。私を自分の思い通りにコントロールしようとしていた母親に対する怒りの感情。この二つの怒りの感情の発信の仕方が人の目に正義感と映っただけなのです。自分自身の中には正義感などはない。あるのは、正義感の中に隠れていた怒りの感情だけであり、無力で空しい自分に気がつきました。
  また、自分が反発して、拒否し否定していた親の生き方(人間関係)が、人生の一部となっていることにも気がつきました。そして、過去に支配されている自分の一部分をありのまま受容したのです。こうして、私は自分の怒りを処理しながら感情の出し方を修正すると共に人格的な歪みを修正してきました。
  その結果、人を変えずに自分が変わることが可能であることがわかってきました。それだけではなく、自分の過去の解釈も変わってきました。神様は、恵の中で過去の出来事を通して自分自身を取り扱って下さったのです。私は、一つひとつの出来事が神の計画であったことが明確になりました。神の前に無駄なものは何ひとつないことは嬉しいことです。
  過去と向き合うことは、自分を形成(組み立てている)している自分を知ることです。そして、なぜ、現在のような行動をとり、考え、感じるのかを理解するようになります。すると、自分自身が何者かが理解できるようになるのです。自分自身を理解することは、家族とその背景、歴史を理解することなしに不可能なのです。

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