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著者プロフィール



こころと魂の健康
 
 

渡辺俊彦氏


人間関係(U)

 最近、「傾聴ボランテア」が流行しているようです。私は「傾聴する」ということがとても苦手な者でした。人の話を最後まできけなかったのです。私は、相手が話している途中、必ず口を挟み、内容を評価してしまっていました。当然、良好な人間関係を築くことなど出来ません。そんな自分に気がつき「きく」訓練を自分に課しました。自分で自分の癖を修正するために、お年寄りの方の話をきくようにしたのです。相手に対して失礼なことでしたが、その方法しか思いつかなかったからです。
  実際、お年寄りの方々の話しぷっりは昔話に花が咲き自慢げでもあり、悲しげでもありました。自分の人生をふり返りながら喜びや悲しみを何時間でも話すのです。最初の頃、きくことの苦手な私は疲労困憊しました。そのような体験をしながら、どうしたら喜んで話してもらえるのか、どうしたら共感するきき方が出来るかなど素人なりに一生懸命に試行錯誤しながら修正していきました。時間が経過するにつれて苦痛感が軽減していく感覚を感じるようになりました。そして、以前よりはきくことが出来る自分になったような感じがしてきたのです。こうして、人間関係を築くための修正のスタートをしたことを思い起こします。
  私たちは、人の話の何をきけばよいのでしょうか。私たちは相手が「何を考えているのか」「何を思っているのか」「何を感じているのか」をきくのです。そのきき方に三つのスタイルがあります。日本語には「きく」という漢字の表現が三つあります。それは「聞く」「聴く」「訊く」の三つです。
「聞く」は、門構えに耳と書きます。このきき方は、「構え」をもったきき方ということです。それは、自分の内にある枠組み(価値観、経験など)をもってきく姿です。このきき方は、偏見を生んでしまいます。
「聴く」は、相手の話をききたいという意志をもってきくという姿です。それは、耳をダンボのように大きくし心をひとつの方向にむけてきくきき方です。このきき方は、自分の価値観、経験などを脇に置いてきく姿なのです。
「訊く」は、言葉を使ってきくということです。それは、意味のある対話をする姿のことです。相手は発する言葉で心を開いたり閉じたりするものです。意味のある対話をするために注意するポイントがあります。第一は、自分の使っている言葉の意味と相手の使っている言葉の意味に違いがあることを知ることです。従って、使っている言葉の意味を確認することが大切です。第二は「思い込み」で話をきかないことす。私たちは、第一印象で「この人はこういう人だ」と決め込んでしまう傾向を持っています。第一印象は全て該当しているとは限らないのです。そこで、第一印象を確かめる質問をすると良いでしょう。第三は「不安」です。私は、この人にあの人に自分はどう評価され思われているという不安が強いと意味のある出会いは経験できません。第四は「自己防衛」です。人は人間関係の中で自分を守るために無意識的に反応しています。そして、自分の気持ちを防衛しながら相手に自分の気持ちをわからせようとメッセージを送ろうとすることもあるのです。具体的には、一人で静かにしていたり、うずくまったりすることでメッセージを送っていることがあります。そのメッセージは「私にもっと注意を向けてよ」です。第五は「目的」です。私たちが人と出会うとき、目的を明確にすることは意味のある出会いを経験させます。しかし、目的のない出会いは建設的なものを生み出しません。
  ボンフェッファーは「第一の奉仕は人の話をきくことである」と言いました。私たちは、三つのきき方のいずれの姿で人と関わっているでしょうか。優れたきき手になりたいものです。

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